夢のような星(トレース)

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こう回答しながら、その星の住人はまわりを見まわし、にが笑いする。深刻で虚無的な笑いだった。たしかに悩みは存在している。ただひとつ。話し相手が自分のほかに一人もいないことだ。かつてはこの星も、さまざまな悩みをかかえこんだ、ありふれた星のひとつだった。それがある日、宇宙からの変な電波を受けて以来、みな頭がおかしくなり、その結果が人口の減少となってあらわれた。
そして、ついに最後の一人となってしまった。気をまぎらす話し相手がない。こんなふうに外部に求める以外には。
それに、こんなことになってしまった原因である、あの思わせぶりな文句。それを他の惑星にむけてしゃべりまくるのは、この上ない娯楽でもあるのだった。
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