建築の日本

森美術館で開催されている、建築の日本展へ

テーマ別に分類された展示の中で、印象に残ったのは、作品では丹下健三氏の自邸とライゾマティクスのスケール展示、タブレットを用いて住宅の設計をするHouse maker、全体的には、テーマ別で所々に印象的なテキストが壁に貼られていることであった。
歴史的なものと現代的なものを関連づけるテーマ設定と、今の日本を見据えたテーマ設定がなされているように思えた。
歴史的なものと現代的なものの関連でいうと、厳島神社鳥居と菊竹さんの東光園の組柱や弧篷庵芒せんの視覚的な操作と前田圭介さんのatelier-bisque dollの壁の作り方の対比はとても印象深く、 なるほどそういう意味で伝統は受け継がれているのかもなと思った。
妙喜庵の待庵の展示もスケールを知るという意味では有意義だと思うのだが、露地庭を含めた周囲の設えとアプローチの雰囲気が茶の湯のための空間において重要であるということがもう少し感じられてほしかった。ただ小さい空間ということではなく。
今の日本を見据えたテーマとして、コミュニティについて言及がある、「集まって生きるかたち」というセクションがあった。
ダイバーシティの議論が熱を帯びている時代において、テーマと答えが日本的であると、個人的には思っている。代官山ヒルサイドテラスに象徴されるような割と小さなスケールを多様性をもって集合させることが日本人は得意だと思う。(単純だが)長屋など、小さな空間で集まって生きてきたルーツがあり、村や集落の現代版ビルディングタイプとして、シェアハウスなどを捉えられるのではないか。
東京五輪をみすえて、世界へのアピールという点もあったのだと思う。オリンピックの視点でみると、1964年時代は個の建築家が非常に活躍していた時代を想像する。代々木屋内競技場の丹下さんはもちろん駒沢体育館の芦原さん、など、個人名が非常に目立つという印象をもった。時代のパワーに負けないエネルギーを建築に注ぎ込む建築家の姿を思い浮かべた。
一方で建築は建築家だけでは実現出来ない。建設過程の映像からみられる職人技、建築を生み出す背景をつくる存在は様々な立場にある。

「建築の日本」という言葉が示すように、建築という広い世界の中で、日本が持つ環境、辿ってきた歴史、現代の状況や今を生きる人たちの新たな思考、それらが表現されることで、もちろん2020年を控えた海外からの目線にインパクトを与えるということもあると思うが、日本に生きる者として、自分がどんなところに立っていて、何に囲まれているのか、それをイメージさせてくれて背筋が伸びる思いである。

 

https://medium.com/kenchikutouron/%E6%82%AA%E3%81%97%E3%81%8D-%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90-%E3%81%AE%E3%82%82%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%99%E3%82%82%E3%81%AE-5c908ce8ea9